ビルメンテナンス業で人が集まらない5つの理由と、今日からできる打ち手

若い層が新しく入ってこないまま、いま働いている層だけが年齢を重ねていく構造を表した抽象図 業界別の採用課題

BUILDING MAINTENANCE / ビルメンテナンス

人が減ったのではなく、
入ってこないまま10年が過ぎた。

国勢調査の10年分を並べると、この業界で何が起きたのかがはっきり出ます。

「募集を出しても、応募が1件も来ない」

「来るのは60代以上の方ばかりで、数年後が読めない」

「時給を上げたが、それでも埋まらない」

ビルメンテナンス業で人が集まらないのは、その会社の努力が足りないからではありません。業界全体の人の入り方が、この10年で構造的に変わっています。まずその事実を数字で押さえたうえで、個社が今日から動かせるところを5つに分けて整理します。

結論:起きているのは「高齢化」ではなく「新規流入の停止」

この業界の話をするとき、たいてい「高齢化が進んでいる」で終わります。しかし国勢調査の年齢構成を10年分並べると、もう少し具体的なことが見えます。

年齢層平成22年平成27年令和2年10年の増減
20代5.0%4.9%5.4%+0.4pt
30代8.8%7.6%7.1%−1.7pt
40代11.9%12.7%12.4%+0.5pt
50代24.1%18.5%16.4%−7.7pt
60代39.9%40.1%30.9%−9.0pt
70代9.2%14.8%25.2%+16.0pt
ビル・建物清掃員の年齢構成割合。出典:令和2年国勢調査(総務省)。厚生労働省「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」(令和7年6月13日)掲載の図から作成。

読み方はこうです。70代が9.2%から25.2%へ、10年で2.7倍になりました。その一方で、これまで現場の中心だった50代は24.1%から16.4%へ縮んでいます。20代・30代・40代はほとんど動いていません。

つまり新しく入ってくる人が増えないまま、いま働いている人がそのまま歳を重ねたという形です。「若者が採れない」以前に、これまで主要な採り口だった50代の流入が細っています。

押さえておきたい前提の数字

ビルメンテナンス業の従事者はビルクリーニング業が全体の80%。その有効求人倍率は約2.0〜3.0で横ばいに推移し、地域による偏りはなく全国的に人手不足です。そして雇用形態はパート・アルバイトが74.2%。(厚生労働省・前掲資料より)

最後の74.2%が、採用設計ではいちばん効いてきます。後述します。

人が集まらない5つの理由

厚生労働省の同じ資料は、現場作業員が集まらない要因として①清掃作業そのものの心理的・肉体的負担 ②早朝出勤を求められることが多い ③施設によっては土日を問わず、トラブル時にはイレギュラー対応も必要の3点を挙げています。これは仕事の性質そのものの話で、個社ではすぐに変えられません。

ただし実務で見ていると、変えられないこの3つとは別に、変えられる理由が2つ乗っています。合わせて5つに整理します。

01仕事の中身が、応募前にまったく想像できない

清掃も設備管理も、外から見て何をしているかが分かりにくい仕事です。求人票にあるのは「日常清掃業務」「設備の巡回点検」といった言葉だけ。応募を迷っている人は、1日の流れも、どのくらいの重さの物を運ぶのかも、休憩がいつ取れるのかも分かりません。

分からないものに人は応募しません。特に体力に不安がある層ほど、想像がつかない仕事は候補から外します。ここは会社側で埋められます。

02誰に向けた募集なのかが決まっていない

前述のとおり、この業界の雇用形態はパート・アルバイトが74.2%です。にもかかわらず、求人の書き方が正社員募集とパート募集で分かれていない会社がよくあります。

朝2時間だけ働きたい人と、資格を取って設備管理でキャリアを作りたい人では、知りたいことが正反対です。両方に向けて書かれた求人は、どちらにも刺さりません。

03負担の大きさ(=資料が挙げる①)

心理的・肉体的負担は仕事の性質です。ただし「実際にどのくらいか」が伝わっていないことによる過大な想像は、別の問題です。実際より重く見積もられて避けられているなら、それは損をしています。

04早朝勤務(=資料が挙げる②)

施設の稼働前に作業する必要があるため、早朝の勤務は避けにくい。ただしこれは「朝が早い代わりに昼過ぎには終わる」という条件でもあります。その言い換えが求人に書かれているかどうかで、届く相手が変わります。

05不規則な対応(=資料が挙げる③)

土日の作業やトラブル時のイレギュラー対応。頻度を明示しないまま「対応をお願いすることがあります」とだけ書くと、読む側は最悪のケースを想像します。月に何回程度なのかを書いたほうが、応募は増えます。

今日からできる打ち手(費用がかからない順)

いきなり採用手法を増やす前に、手元で直せるところがあります。上から順に、費用ゼロのものから並べました。

  • 募集を「正社員」と「パート」で完全に分ける

    1本の求人で両方に向けて書くのをやめます。パート向けには勤務時間の実際と、家庭や別の仕事との両立のしかたを。正社員向けには資格取得の支援と、数年後にどうなるかを書きます。費用はかかりません。

  • 1日の流れを、時刻つきで書く

    「6:00 出勤・朝礼」「6:15 共用部清掃」「9:00 休憩」のように、時刻と作業を並べて書くだけで、想像できない不安がかなり消えます。求人票の3行を書き換えるだけの話です。

  • 不規則な対応の「頻度」を数字で書く

    「月1〜2回程度」「年に数回」と書けるなら書く。書かないほうが応募が減ります。

  • 素材写真をやめて、自社の現場写真にする

    フリー素材のオフィス清掃写真は、応募者には一目で分かります。実際の現場・実際の社員の写真に差し替えるだけで、情報量が変わります。

  • 働いている人の姿を、動画で見せる

    ここで初めて費用がかかります。上の4つをやっても足りない場合に検討する順番です。

効かない打ち手も書いておきます

時給を上げるだけ

有効求人倍率が2.0〜3.0で全国的に人手不足という状況では、時給を上げても近隣他社がすぐ追いつきます。上げた分が定着に効く場合はありますが、「応募が来ない」ことの解決策としては続きません。先に、想像できない不安を消すほうが安く効きます。

媒体を増やす

求人原稿の中身が同じまま掲載先だけ増やしても、見る人が増えるだけで、判断は変わりません。原稿を直してから増やす順番です。

「アットホームな職場です」と書く

ほぼ全社が書いているので、判断材料になりません。書くなら、そう言える具体的な事実(勤続年数、平均年齢、休憩室の様子)に置き換えてください。

動画が効くのは、どの理由に対してか

私たちは採用動画を作る会社なので、ここは正直に線を引いておきます。上の5つの理由のうち、動画が効くのは①と、②の一部だけです。

理由動画で変わるか本来の打ち手
① 仕事の中身が想像できない効く1日の流れを映す
② 誰向けの募集か決まっていない一部まず求人を分ける(無料)
③ 肉体的な負担効かない体制・機材・省力化投資
④ 早朝勤務効かないシフト設計と条件提示
⑤ 不規則な対応効かない頻度の明示(無料)
③④⑤は労働条件そのものの話で、映像では変わりません。

③④⑤に不満がある状態で動画だけを作ると、入社後にすぐ辞められます。先に条件の話を片づけてください。逆に①が原因で応募が来ていないなら、動画はかなり直接的に効きます。仕事の中身を伝えることが、そもそも映像がいちばん得意なことだからです。

よくある質問

募集を出しても応募が来ません。まず何から手をつければいいですか?

求人原稿を、正社員向けとパート向けに分けるところからです。この業界は雇用形態の74.2%がパート・アルバイトなので、1本の原稿で兼ねると、いちばん人数の多い層に向けた情報が薄くなります。費用はかからず、その日のうちに直せます。

時給を上げれば応募は増えますか?

一時的には増えますが、続きません。ビルクリーニング業の有効求人倍率は約2.0〜3.0で全国的に人手不足なので、近隣他社もすぐ追随します。先に「仕事の中身が想像できない」という状態を解消したほうが、費用をかけずに効きます。

若い人を採りたいのですが、この業界では無理でしょうか?

無理ではありませんが、20代の構成比はこの10年ほぼ横ばい(5.0%→5.4%)で、業界全体として若年層の流入が増えている状況ではありません。実務的には、まず50代の流入が細っている(24.1%→16.4%)ことへの対処のほうが、母数が大きく成果につながりやすいです。

清掃と設備管理で、採用のやり方は変えるべきですか?

変えたほうがいいです。清掃はパート中心で「働き方」が判断軸、設備管理は資格とキャリアが判断軸になります。同じ会社の求人でも、伝えるべき内容がほとんど重なりません。

採用動画を作れば人手不足は解決しますか?

しません。動画が効くのは「仕事の中身が想像できないので応募されない」という状態に対してです。早朝勤務や休日対応といった労働条件そのものへの不満は、映像では変わりません。条件面を先に整理したうえで使うと効きます。

高齢の従業員が多く、数年後が不安です。何をしておくべきですか?

いま在籍している方の作業を記録として撮っておくことをおすすめします。採用用途だけでなく、手順の継承にそのまま使えます。70代以上が全体の27.0%を占める業界なので、引き継ぎの資料が残っていないこと自体が数年後のリスクになります。

まとめ

ビルメンテナンス業で人が集まらない背景には、10年かけて進んだ新規流入の停止という構造があります。これは個社では変えられません。

変えられるのは、「仕事の中身が想像できないので応募されない」という部分だけです。ただしこの部分は、求人原稿の書き換えと写真の差し替えという費用ゼロの手から始められます。そこまでやったうえで足りなければ、映像を検討してください。順番を逆にすると、お金をかけた割に効きません。

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求人原稿の見直しだけで足りる場合は、その旨をお伝えします。
03-6822-1206(平日10:00〜19:00)/ info@onetrack.co.jp

【運営者について】現場職採用ラボは、映像制作会社である株式会社OneTrackが運営しています。記事内には自社サービスの紹介・誘導が含まれます。中立な第三者による比較サイトではありませんので、他社との比較検討の際は各社の公式情報もあわせてご確認ください。本記事で引用した統計は、厚生労働省「省力化投資促進プラン ―ビルメンテナンス業―」(令和7年6月13日)および令和2年国勢調査(総務省)によります。

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