トラックドライバーが採用できない|2026年の実情と、中小が勝てる採用の型

平均勤続は長いのに新しい人が入ってこないという、運送業の入口の細さを表した抽象図 業界別の採用課題

TRUCK DRIVER / 運送・ドライバー

辞めない業界なのに、
入ってこない。

平均勤続15年1ヶ月、平均年齢49.7歳。この2つが同時に成り立つ意味を考えます。

「求人を出しても、応募が来るのは60代の方ばかり」

「賃上げしたのに、若手が入ってこない」

「大手と条件で戦えない。中小はどうすればいいのか」

運送業の採用の話は、たいてい「労働環境が厳しいから人が辞める」という前提で語られます。ところが実態調査の数字を見ると、この業界のドライバーは、そう簡単には辞めていません。問題は出口ではなく、入口にあります。

結論:離職ではなく、入職が止まっている

全日本トラック協会「2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」(貨物運送事業者565社の回答)から、3つの数字を並べます。

項目令和6年度令和5年度変化
男性運転者の平均年齢49.7歳49.0歳+0.7歳
全職種の平均年齢48.5歳47.6歳+0.9歳
男性運転者の平均勤続年数15年1ヶ月14年6ヶ月+7ヶ月
男性運転者の月額賃金360,300円333,500円+8.0%
出典:公益社団法人全日本トラック協会「2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」第3表。賃金は令和6年5・6・7月にきまって支給された1人1ヵ月平均額。

この4つを、順番に読んでみてください。

平均勤続年数が15年を超えています。15年勤める人が平均、という業界は、日本全体で見てもかなり長いほうです。少なくとも「入ってすぐ辞めていく業界」ではありません。

にもかかわらず、1年のあいだに平均年齢が0.7歳(全職種では0.9歳)上がりました。人が普通に入れ替わっている業界なら、平均年齢は年を越しても大きくは動きません。新しい人が入れば下に引っ張られるからです。1年で1歳近く上がるということは、いま働いている人がそのまま歳を重ねているだけ、ということです。

そして見逃せないのが4つ目です。賃金は前年比8.0%上がっています。それでも平均年齢は上がりました。

この記事でいちばん言いたいこと

賃上げは進んでいます。それでも若手は入ってきていません。つまり「給料が安いから来ない」だけでは説明がつきません。給料以外の理由で候補から外されている、と考えたほうが実態に合います。

では、何が入口を塞いでいるのか

賃金以外で、この仕事が候補から外れる理由は、おおよそ次の4つに整理できます。

011日の過ごし方が、まったく想像できない

ドライバーの仕事は、外から見ると「運転している」以外の情報がありません。実際には、荷積み、待機、荷降ろし、伝票処理、点検と、運転以外の時間がかなりを占めます。その内訳を知らない人にとって、この仕事は「1日中ずっと運転し続ける仕事」に見えています。

実際と違う想像で敬遠されているなら、それは会社側の損です。ここは伝え方で変えられます。

02拘束時間の「実際」が書かれていない

長時間労働のイメージが先行している業界です。だからこそ、自社の実際がイメージより良いのであれば、それを具体的に書かないと伝わりません。「日勤のみ」「土日休み」「基本的に日帰り」といった条件があるなら、いちばん目立つ場所に書くべきです。

03免許の要件が分かりにくい

準中型・中型・大型と区分があり、取得時期によって運転できる車両が変わります。応募を検討している人が、自分の免許でこの求人に応募できるのかを判断できないことがあります。判断できない求人には応募されません。免許取得支援がある場合も、その条件(費用負担、勤務扱いか、退職時の返還の有無)まで書いてください。

04職場に誰がいるのかが見えない

平均年齢49.7歳という数字を、応募者は肌感覚で知っています。「自分と同年代の人がいるのか」「新しく入って浮かないか」は、実際に多い質問です。答えが用意されていない求人は、その時点で不安を残したままになります。

中小が大手と戦うなら、どこで戦うか

条件面で大手と正面から競うのは現実的ではありません。中小が勝てるのは、大手が構造的に出せない情報を出すことです。

戦う場所大手中小
給与・賞与強い正面から競わない
福利厚生の制度数強い正面から競わない
誰と働くかが分かる出しにくい出せる
社長・上司との距離出しにくい出せる
1日の流れの具体性拠点差で出しにくい出せる
入社後すぐ相談できる相手制度で説明実名と顔で示せる
大手が「出しにくい」のは、拠点数が多く、全社共通の説明にせざるを得ないためです。

下の4行は、規模が小さいほど出しやすくなります。条件で負けている会社ほど、「誰と働くか」を出す価値が大きいという関係です。

実際にやってみた例

千葉県成田市の東関交通株式会社様(貸切バス・旅行・タクシー・ハイヤー)では、Instagramでドライバーの1日を追う動画を配信しています。運転席から見える景色、点呼、休憩の様子、そして社員本人が仕事について話す場面が入っています。当社で制作したものです。

この形式の要点は、会社が「うちはいい会社です」と言わないことです。1日の流れをそのまま見せて、判断は見た人に委ねます。想像できないから応募されない、という状態に対しては、これがいちばん直接的に効きます。

効果が出るまでの実感値

当社が運用支援している他業種の例では、最初の応募が来たのは3ヶ月目と4ヶ月目でした(エルライン株式会社様・株式会社さすがや様、いずれもInstagram月8本)。1〜2ヶ月で判断しないでください。なお、さすがや様のケースでは応募経路自体はInstagramではなく、求人媒体で見つけた方が「決め手はInstagramを見たこと」と話しています。SNSは応募の入口とは限らず、いま出している求人の”決まる率”を上げる働きをします。

効かない打ち手

賃上げだけで解決しようとする

業界全体で前年比8.0%の賃上げが起きています。同じ土俵で上げ続けても、体力のある会社が有利なだけです。上げること自体は悪くありませんが、「これで応募が来る」という期待は持たないほうがいいです。

「アットホームな職場」と書く

ほぼ全社が書いています。書くなら、平均勤続年数や実際の年齢構成といった、検証できる事実に置き換えてください。この業界は勤続年数が長いので、自社の数字がそのまま武器になる会社は多いはずです。

きれいな車両の写真だけを並べる

車両は各社似ています。求職者が知りたいのは車ではなく、その車に乗っている自分の1日です。

よくある質問

トラックドライバーの求人を出しても応募が来ません。何から見直すべきですか?

1日の流れを、時刻つきで具体的に書くところからです。運転以外の時間(荷積み、待機、荷降ろし、伝票処理)が実際にどのくらいかを書くと、「1日中運転し続ける仕事」という誤解が解けます。費用はかからず、その日のうちに直せます。

賃上げをすればドライバーは採用できるようになりますか?

それだけでは難しいです。全日本トラック協会の調査では男性運転者の月額賃金が前年比8.0%増となった一方、同じ期間に平均年齢は49.0歳から49.7歳へ上がりました。業界全体で賃上げが進んでも若手の入職は増えていない、という状況です。

ドライバーの平均年齢はどのくらいですか?

全日本トラック協会の2024年度版調査では、男性運転者の平均年齢は49.7歳、事務員や整備員を含む全職種では48.5歳です。けん引運転者は50.8歳、大型運転者は50.4歳と、大型車ほど高い傾向があります。

中小の運送会社が大手と採用で戦うにはどうすればいいですか?

条件面で正面から競わず、大手が出しにくい情報で戦ってください。誰と働くか、上司との距離、1日の具体的な流れは、拠点数の多い大手ほど全社共通の説明にせざるを得ず、具体的に出しにくい領域です。規模が小さいほど有利になります。

採用動画を作れば、すぐに応募は増えますか?

すぐには増えません。当社が支援した例では最初の応募まで3〜4ヶ月かかっています。また、SNSが応募の直接の入口になるとは限らず、求人媒体で見つけた人が動画を見て応募を決める、という経路もあります。1〜2ヶ月で判断しないでください。

免許取得支援は求人に書いたほうがいいですか?

書いたほうがいいですが、条件まで書いてください。費用を会社が負担するのか、取得のための時間は勤務扱いになるのか、早期退職時に返還が必要かどうか。ここが曖昧だと、応募者は最悪のケースを想定して判断します。

まとめ

この業界のドライバーは、平均で15年以上勤めています。辞めないのに、入ってこない。だから採用の打ち手は、定着施策よりも入口の設計に寄せるべきです。

そして賃金は業界全体で上がっています。それでも入ってこないということは、給料以外の理由で候補から外されているということです。外されている理由のうち、「1日の過ごし方が想像できない」だけは、会社側から埋められます。まず求人原稿の書き換えから、それで足りなければ映像へ、という順番で進めてください。

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