入社3ヶ月で辞められる現場の共通点|面接で言わなかったことが原因

入社という境界の前後に段差があり、そこで人が離脱してしまう構造を表した抽象図 定着・離職

RETENTION / 早期離職

辞める理由の上位は、
全部、入社前に言えたこと。

早期離職は入社後に起きた問題ではなく、入社前に伝えなかったことの結果です。

「採用してもすぐ辞める。教える時間が無駄になっている」

「面接では意欲があったのに、3ヶ月で来なくなった」

「入社後のフォローを増やしたが、それでも辞める」

早期離職の対策というと、入社後のフォロー体制の話になりがちです。メンター制度、面談の頻度、研修の充実。どれも無駄ではありませんが、辞めた人が挙げる理由を実際に見ると、その多くは入社後に発生した問題ではありません。

結論:人が辞める理由は、入社前に判明していたはずのこと

厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」から、転職した人が前職を辞めた理由を見てみます。

最も多い理由(個人的理由等を除く)次に多い理由
男性定年・契約期間の満了 14.1%給料等収入が少なかった 10.1%
女性労働時間、休日等の労働条件が悪かった 12.8%職場の人間関係が好ましくなかった 11.7%
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」表5。「その他の個人的理由」(男性20.2%・女性24.3%)および「その他の理由(出向等を含む)」を除いた順位。

ここに並んでいるのは、給料、労働時間と休日、人間関係です。定年・契約満了を除けば、残りはすべて入社する前に、会社側が伝えようと思えば伝えられた情報です。

もうひとつ、前年からの伸びも出ています。上昇幅がいちばん大きかったのは、男性が「会社の将来が不安だった」で2.2ポイント増、女性が「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」で1.7ポイント増でした。会社の先行きも労働条件も、入社前に説明できる項目です。

この記事の前提

早期離職を「入社後に何かが起きた」と考えると、対策は入社後のフォローになります。しかし「入社前に伝えていなかったことが、入社後に判明した」と考えると、対策は入社前の情報開示になります。後者のほうが、費用も手間もかかりません。

なぜ面接で言わないのか

会社側が悪意を持って隠しているケースは、実はほとんどありません。言わない理由は、だいたい次の3つです。

01言うと辞退されると思っている

いちばん多い理由です。人手が足りない状況ほど、目の前の候補者を逃したくない。ただし辞退されるのと、3ヶ月後に辞められるのとでは、後者のほうが損失が大きいです。採用費用に加えて、教えた時間と、教えた人の労力が消えます。

02社内では当たり前すぎて、伝えるべき情報だと気づいていない

これも多い。繁忙期の残業、夏場の暑さ、休憩室の場所、着替えの時間が勤務時間に入るのかどうか。社内の人間にとっては説明するまでもないことが、外から来る人には全部が未知です。悪意なく漏れます。

03面接の時間が短く、条件面の確認で終わる

30分の面接では、経歴の確認と条件のすり合わせで終わります。実際の1日がどう進むか、誰と組むのか、最初の1ヶ月に何をするのかまで届きません。

入社前に伝えておくべき5つ

離職理由の上位に対応させると、伝えるべきことは絞れます。

  • 労働時間と休日の「実際」

    規定上の所定労働時間ではなく、実際の始業前後の動き。着替えや朝礼が何時からか、繁忙期はどのくらい変わるか、休日出勤は年に何回程度か。離職理由の上位に直結します。

  • 給与の内訳と、上がり方

    総額だけでなく、固定給と手当の内訳、残業代の計算方法、そして何年後にいくらになるのか。「給料が少なかった」で辞める人の一部は、金額そのものではなく上がる見通しがないことで辞めています。

  • 一緒に働く人

    直属の上司、同じ班のメンバー、年齢構成。人間関係は離職理由の上位ですが、入社前に完全には分かりません。ただし「誰と働くか」が事前に見えているかどうかで、入社後のギャップの大きさは変わります。

  • 最初の1ヶ月にやること

    いきなり現場に出るのか、しばらく先輩に付くのか。何ができるようになったら独り立ちなのか。ここが不明なまま入ると、最初の数週間で「自分には無理かもしれない」と判断されます。

  • 会社の先行き

    男性の離職理由で前年からの伸びが最も大きかった項目です。売上や取引先を細かく開示する必要はありませんが、今後どの方向に向かうのかを一言でも説明しているかどうかで受け取り方が変わります。

「言うと採れなくなる」への答え

正直に言えば、不利な情報を出すと応募数は減ることがあります。これは事実なので隠しません。

ただし減るのは、その情報を知っていたら応募しなかった人です。その人が入社した場合に起きることを考えてみてください。

先に伝えた場合伝えなかった場合
応募数減ることがある多い
面接の手間減るそのまま
採用費用1回で済む辞めるたびに再発生
教育コスト回収できる丸ごと消える
既存社員の負担変わらない教え直しが繰り返される
現場の空気保たれる「どうせまた辞める」が定着する
最後の行が、いちばん回復に時間がかかります。

とくに現場職では、教える側が現場のベテランです。その人の時間が繰り返し消えると、採用以前に既存の戦力が削られます。応募数ではなく、入社後に残った人数で判断してください。

効かない対策

入社後のフォローだけを増やす

面談を増やしても、労働時間や給与への不満そのものは変わりません。フォローで拾えるのは「相談すれば解決すること」だけです。条件面のギャップは、入社前にしか埋められません。

「入社後に説明します」で先送りする

面接で聞かれたことを保留にすると、入社日までの間に不信が育ちます。答えにくい質問ほど、その場で答えたほうが結果的に定着します。

悪い面を伝えたつもりで、表現をやわらげる

「多少体力は使いますが」「繁忙期は少し忙しくなります」。この書き方だと、伝えたことになりません。数字か、具体的な場面で言ってください。

よくある質問

入社3ヶ月以内に辞められるのは、何が原因なことが多いですか?

入社後に新しく発生した問題より、入社前に伝わっていなかった条件が入社後に判明したケースが多くを占めます。雇用動向調査でも離職理由の上位は労働時間・休日、給料、人間関係で、いずれも入社前に説明できる項目です。

不利な条件を面接で伝えると、辞退されませんか?

辞退されることはあります。ただし辞退されるのは、その条件を知っていたら応募しなかった人です。その人が入社して3ヶ月で辞めた場合、採用費用に加えて教育にかけた時間と、教えた社員の労力が失われます。応募数ではなく入社後に残った人数で判断してください。

入社後のフォロー体制を強化すれば早期離職は減りますか?

一定の効果はありますが、それだけでは減りません。フォローで解決できるのは相談すれば解決する問題だけで、労働時間や給与といった条件面のギャップは入社前にしか埋められないためです。

面接時間が短く、詳しい説明まで手が回りません。どうすればいいですか?

面接で口頭で伝えるのではなく、事前に読める・見られる形にしておくのが現実的です。1日の流れを時刻つきで書いた資料や、現場の様子を撮った映像を応募前に見てもらえば、面接は確認だけで済みます。

人間関係が理由の離職は、入社前に防げますか?

完全には防げません。ただし誰と働くのかが入社前に見えているかどうかで、入社後のギャップの大きさは変わります。直属の上司や同じ班のメンバー、年齢構成を事前に示しておくことで、想像と現実の差を小さくできます。

採用動画は早期離職の対策になりますか?

事前に伝える手段としては有効です。ただし映像で変わるのは伝わり方だけで、労働条件そのものへの不満は変わりません。条件面に問題がある場合は、映像を作る前にそちらを整理してください。

まとめ

早期離職の対策は、入社後ではなく入社前に置いてください。辞める理由として実際に挙がっているのは、労働時間と休日、給料、人間関係、そして会社の先行きです。定年や契約満了を除けば、いずれも入社前に伝えられます。

伝えると応募は減るかもしれません。それでも、教える側のベテランの時間が繰り返し消えることに比べれば、はるかに安く済みます。

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